不法就労助長罪の厳罰化と企業実務への影響

不法就労助長罪の厳罰化と企業実務への影響

― 技能実習・特定技能における不法就労の行政責任と「技術・人文知識・国際業務」の適正運用 ―

1 不法就労助長罪の法的根拠と罰則(厳罰化)

外国人の就労は、【出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」)】に基づき、在留資格ごとに厳格に管理されています。許可された在留資格の範囲を超えた就労や、在留資格を有しない者の就労は「不法就労」となります。

これを助長した事業主等に適用されるのが、入管法第73条の2に定める不法就労助長罪です。

法令根拠

所管:出入国在留管理庁
条文:入管法第73条の2(不法就労助長)

同条は、次の行為を処罰対象とします。

  1. 不法滞在者を雇用した者
  2. 在留資格の範囲を超えて就労させた者
  3. 不法就労をあっせんした者

罰則(改正後)

近時の法改正により、不法就労助長罪の法定刑は強化されました。

区分改正前改正後
自由刑3年以下の懲役5年以下の拘禁刑
罰金300万円以下500万円以下
併科ありあり

※「拘禁刑」は刑法改正に伴う用語整理によるものです。

法人については入管法第76条の2の両罰規定により、行為者のみならず法人自体も罰金刑の対象となります。

本改正は、外国人雇用におけるコンプライアンス確保を一層強化する趣旨で行われたものであり、企業実務への影響は重大です。


2 技能実習制度と不法就労

技能実習制度は、国際協力としての技能移転を目的とする制度であり、労働力確保を目的とする制度ではありません。

制度の監督主体は、

  • 出入国在留管理庁
  • 外国人技能実習機構

です。

不法就労となる典型例

・認定実習計画にない業務への従事
・他社への無断出向
・許可なき派遣形態での就労

技能実習は原則として労働者派遣が認められていません。(一部例外有)実習実施者以外の事業所で労務提供をさせる場合、計画外活動として違法となる可能性があります。

違反が認定された場合:

  • 技能実習計画の取消し
  • 受入停止処分
  • 監理団体への業務停止
  • 刑事責任(不法就労助長罪)

刑事責任は、改正後は5年以下・500万円以下という重い処罰となります。


横浜|EST行政書士|不法就労|神奈川|不法就労助長罪

3 特定技能制度と行政責任

特定技能は、人手不足分野における即戦力受入れ制度です。制度所管は【出入国在留管理庁】です。

特定技能1号の法的義務

入管法第19条の22以下により、所属機関には支援計画の作成・実施義務があります。

違反があった場合:

  • 受入れ停止
  • 改善命令
  • 登録支援機関の登録取消し

特定技能外国人を許可外業務に従事させれば、不法就労助長罪の対象となります。改正後は量刑が引き上げられているため、企業の内部統制体制が問われます。


4 在留資格「技術・人文知識・国際業務」の適正範囲

いわゆる「技人国」は、【出入国管理及び難民認定法】別表第一の二に規定される在留資格であり、専門的・技術的業務への従事を前提とする資格です。

単純労働は原則として含まれません。

在留資格該当性は「主たる業務内容」で判断されますが、これは「主たる業務が専門的であれば従たる単純労働は許される」という意味ではありません。

なお、単純労働が「従たる業務」であっても、反復継続的に行われ、実質的な労務提供と評価される場合には、在留資格外活動と判断され得ます。

入管実務では、形式的な職務記載ではなく、以下の点が総合的に審査されます。

  • 実際の労働時間割合
  • 業務の反復継続性
  • 業務指示系統
  • 報酬との対価関係
  • 組織内での役割実態

たとえ「補助」「応援」「繁忙期対応」と説明されていても、それが日常業務として組み込まれている場合、在留資格該当性は否定される可能性があります。


横浜|行政書士|不法就労助長罪

5 派遣業との関係

労働者派遣は、労働者派遣法に基づく許可制です(所管:厚生労働省)。

技人国資格で派遣形態を取ること自体は直ちに違法ではありませんが、

  • 派遣先業務が在留資格該当性を満たすこと
  • 派遣元が適法な許可を有すること

が前提です。

名目的に「技術職」としながら実態が単純労働である場合、派遣法違反のみならず、入管法違反として刑事責任が発生する可能性があります。


6 行政処分・刑事責任・企業リスク

在留資格外活動に該当する業務を企業が認識し、又は認識し得たにもかかわらず従事させていた場合、【不法就労助長罪(入管法第73条の2)】の成立が問題となります。

不法就労助長罪は、単に不法滞在者を雇用した場合だけでなく、

在留資格の範囲を超えて就労させた場合にも成立します。

つまり、

  • 技人国で許可された専門業務を逸脱し
  • 単純労働が常態化し
  • 企業がその実態を把握しながら業務命令をしている場合

企業側は刑事責任を問われ得ます。

法定刑(改正後)

  • 5年以下の拘禁刑
  • 500万円以下の罰金
  • 又は併科

さらに法人については両罰規定が適用され、企業自体が罰金刑の対象となります。


「従たる業務だから問題ない」は通用しない

刑事責任の成否は、

「主たる」「従たる」という社内整理ではなく、

👉 在留資格の範囲内か否か

で判断されます。

反復継続的な単純労働への従事は、
たとえ業務全体の一部であっても、在留資格外活動と評価される可能性があります。

その場合、外国人本人はもちろん、使用者側も処罰対象となり得ます。


実務上の重大な影響

刑事事件化しない場合でも、

  • 在留資格更新不許可
  • 将来の認定証明書交付不許可増加
  • 企業名公表
  • 行政指導履歴の蓄積

といった実務上の不利益が生じます。

特に、繰り返し違反が疑われる企業は、以後の審査で厳格な資料提出を求められる傾向があります。


7 企業が取るべき実務対応

罰則強化を踏まえ、企業には以下の対応が求められます。

  1. 在留カードの真偽確認(失効情報照会)
  2. 在留資格と職務内容の適合性確認書面化
  3. 派遣契約と実態業務の整合性検証
  4. 支援計画履行記録の保存
  5. 定期的な社内監査体制整備
  6. 管理職への法令研修実施

「知らなかった」では足りません。合理的な確認体制を整備していなければ、過失として処罰対象となる可能性があります。


8 まとめ

不法就労助長罪は、3年・300万円から5年・500万円へと厳罰化されました。これは外国人雇用における違反行為を強く抑止する政策判断の表れです。

技能実習、特定技能、技術・人文知識・国際業務はいずれも制度目的が異なり、制度趣旨を逸脱した運用は刑事責任と行政処分の双方を招きます。

適法な外国人雇用は企業価値を高めます。
一方で制度誤用は、刑事罰・行政処分・公表による信用失墜という三重のリスクを伴います。

厳罰化時代においては、
制度理解・書面管理・内部統制の徹底こそが最大のリスクマネジメントです。


※本稿は入管法および公表資料に基づき作成しています。個別事案については専門家による具体的検討が必要です。

page top