(2026年施行)育成就労制度と監理支援機関の実務

(2026年施行)育成就労制度と監理支援機関の実務

― 技能実習制度からの転換と行政書士の関与ポイント ―


1 はじめに ― 外国人受入れ政策の大転換期

近年、日本の外国人受入れを取り巻く環境は大きく変化しています。
2025年には訪日外国人が4,000万人を突破し、在留外国人も400万人規模へと拡大しました。さらに、就労目的で在留する外国人は250万人を超え、労働市場における外国人の存在は不可欠なものとなっています。

こうした状況のもと、従来の技能実習制度については、

  • 人材育成という建前と実態の乖離
  • 転籍制限による人権問題
  • 監理団体による監督機能の限界

といった課題が指摘されてきました。

これを受けて、2024年に成立した改正法により、
技能実習制度は廃止され、「育成就労制度」へと移行し、2027年4月より施行されることが予定されています。


2 制度の法的根拠と位置づけ

育成就労制度は以下の法令・規程に基づき構成されています。

・「育成就労法」(正式名称:育成就労に関する法律)

・出入国管理及び難民認定法(入管法)改正

・育成就労制度運用要領(令和8年2月公表)

入管法側では「在留資格『育成就労』」の創設・手続が位置づけられる

本制度の基本理念は、

「人材育成」と「適正な労働力確保」を両立させつつ、適正な就労環境を確保することであり、

従来制度との最大の違いは、転籍(一定条件下)を認める点にあります。


3 監理団体から監理支援機関への転換

技能実習制度においては、全国で3,700以上の監理団体が存在し、

  • 受入企業への監査
  • 実習実施状況の確認
  • 技能実習生の生活支援

を担ってきました。

しかし、育成就労制度では、この枠組みが見直され、新たに【監理支援機関】という制度が導入されます。

(1)制度上の位置づけ

監理支援機関は、特定技能制度における「登録支援機関」と類似する役割を担いながらも、

  • より高度な監査機能
  • 労働環境の適正確保
  • 権利保護機能
  • 育成就労計画の履行支援

が求められる点に特徴があります。


4 監理支援機関の設立要件(制度要領ベース)

育成就労制度運用要領において、監理支援機関には以下のような要件が求められています。

(1)法人格の保有

監理支援機関は、

  • 株式会社
  • 一般社団法人
  • 協同組合等

法人格を有する団体であることが必要とされます。


(2)適正な業務遂行体制

以下のような体制整備が求められます。

  • 支援責任者の選任
  • 多言語対応体制
  • 相談窓口の設置
  • 苦情処理体制

これは特定技能制度における登録支援機関の基準と同様の構造を持ちますが、
育成就労ではさらに監査機能との連動性が重視されます。


(3)中立性・独立性の確保

重要なポイントとして、

  • 受入企業との過度な資本関係の排除
  • 利益相反の回避

が明示的に求められています。

これは従来の監理団体において問題となった「名目的監査・実質的従属関係」を防止する趣旨です。

(4)財務的基盤

  • 継続的に業務を遂行できる財務状況
  • 適切な会計管理体制

が必要とされ、形式的な法人では許可が下りない構造となっています。

ただし、優良要件など「追って示す」とされている部分は、 まだ詳細未定である。


5 外部監査人の要件

育成就労制度の大きな特徴の一つが、外部監査の強化です。

(1)外部監査人の設置義務

監理支援機関または受入体制に対し、独立した第三者による監査機能の導入が求められています。


(2)求められる属性

外部監査人については、法務・労務・会計等の専門性と独立性が求められており、
資格は限定されていないものの、実務上は行政書士、社会保険労務士、弁護士等の専門職が候補となり得る。


(3)監査内容

外部監査人は以下の事項を確認します。

  • 労働条件の適正性
  • 在留資格との整合性
  • 支援実施状況
  • 法令遵守状況

単なる書類確認ではなく、実地性・実効性のある監査が求められています。


外部監査人|監理支援機関|EST行政書士|監理団体

6 監理団体からの移行実務

現在、技能実習制度において活動している監理団体は、制度廃止に伴い、

  • 解散
  • 他事業への転換
  • 監理支援機関への移行

のいずれかを選択する必要があります。

特に実務上想定されるのが、「既存監理団体が監理支援機関として再許可を取得するケース」です。


(1)再許可の必要性

監理団体としての許可は、新制度には引き継がれません。
したがって、新たに監理支援機関としての許可申請が必要となります。


(2)審査のポイント

審査ポイントとして:

  • 過去の監理状況
  • 育成就労計画を適切に指導・監理できる体制
  • 監査人の選任・独立性 などが運用要領上も重視されている
  • 法令違反歴の有無
  • 支援体制の実効性
  • 独立性の確保状況

が厳格に審査されることが想定されています。


7 行政書士の関与領域

育成就労制度において、行政書士の役割は大きく拡大します。

(1)許可申請支援

  • 監理支援機関の設立許可申請
  • 体制整備に関する書類作成
  • 内部規程の整備支援

(2)外部監査人としての関与

行政書士は、

  • 入管法の専門家
  • 在留資格適合性の判断能力

を有することから、外部監査人としての関与が制度上想定される専門性に合致し得る。


(3)コンプライアンス体制構築

  • 利益相反チェック体制
  • 内部監査フロー整備
  • 外部通報制度設計

など、制度対応の中核的役割を担うことが可能です。


監理団体|監理支援団体|行政書士

8 今後の実務上の留意点

(1)形式要件から実質審査へ

従来制度に比べ、

  • 実態重視
  • 継続的監査

が重視されるため、形式的な書類整備のみでは不十分です。


(2)利益相反管理の重要性

監理支援機関と受入企業との関係性については、

  • 資本関係
  • 人的関係
  • 業務委託関係

を含めた包括的なチェックが必要となります。


(3)専門職連携の必要性

制度の複雑化により、

  • 行政書士
  • 社会保険労務士
  • 弁護士

との連携体制が重要となります。


9 まとめ

育成就労制度は、単なる制度変更ではなく、日本の外国人労働政策の構造転換と位置付けられます。

その中で監理支援機関は、

  • 支援機能
  • 監査機能
  • 権利保護機能

を併せ持つ重要な存在となります。

今後、既存の監理団体の多くが再編・再許可を迫られる中で、適正な制度理解と実務対応が不可欠です。

行政書士としては、

  • 許可申請
  • 監査業務
  • コンプライアンス設計

の各分野において専門性を発揮し、制度の適正運用に寄与することが求められています。

※本コラムは、令和8年2月公表の「育成就労制度運用要領」および関連法令・公表資料に基づき作成しています。今後、政省令・告示・Q&A等の改訂により、運用内容が変更される可能性があります。



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