離婚相談と住宅ローンの諸問題
― 不動産をめぐる財産分与の実務と対応策 ― 近年、離……

共働き世帯の増加に伴い、夫婦がそれぞれ住宅ローン契約の債務者となる「ペアローン」によりマンションを取得する事例が見られます。
この場合、物件は共有名義となり、かつ各自が独立した債務を負うため、離婚時には「共有不動産」と「複数債務」という二つの法律関係を整理する必要があります。
本稿では、離婚時のペアローンマンションの取り扱いについて、法令および一般的な実務に基づき、次の3つの方法を中心に整理します。
なお、本稿は一般的な法的枠組みを説明するものであり、紛争性のある法律相談や代理交渉は行政書士の業務範囲外(弁護士法72条)であるため、個別の紛争が生じている場合には弁護士への相談が必要となります。
民法768条1項は、協議離婚に際し財産分与を請求できる旨を定めています。 財産分与の対象は、婚姻期間中に夫婦が協力して形成した財産であり、不動産についても名義にかかわらず実質的に共有財産と評価される場合は対象となります。
また、同条3項では、寄与の程度は相等しいものと推定される旨が規定されています。
共有不動産については、民法256条1項により、共有者はいつでも共有物の分割を請求できます。 協議が整わない場合、民法258条に基づき裁判所に分割を請求することができ、裁判所は次の方法を選択します。
マンションのように現物分割が困難な物件では、代償分割または競売が検討されます。
(3)住宅ローン債務の位置付け
住宅ローンは金融機関との契約であり、財産分与とは別の法律関係です。 そのため、離婚に伴う当事者間の合意だけでは債務者の変更はできず、債務引受には金融機関の承諾が不可欠です。
不動産を特定の共有者が取得し、他方に金銭を支払う方法は「代償分割」に該当します。
債務引受には以下があります。
離婚で問題となるのは免責的債務引受ですが、金融機関の審査により承諾の可否が決まります。 返済能力や担保評価が主な審査要素です。
協議が整わない場合、地方裁判所に共有物分割訴訟を提起し、裁判所が競売を命じることがあります。
民法258条3項により、現物分割や代償分割が適切でない場合、裁判所は競売を命じることができます。
共有物分割訴訟 → 裁判所が競売を命じる → 不動産全体を対象とした強制競売(民事執行法) → 売却代金を共有者の持分割合に応じて分配という流れになります。
制度上は可能ですが、資金調達や入札競争の問題があります。
*共有持分だけを競売にかける制度 「持分権の強制競売(民事執行法)」 という制度がありますが、これは別の制度であり、裁判所は「共有持分だけを競売にかける」という選択はできません。【理由】民法258条の目的が「共有関係の解消」だからです。

(1)概要
共有者間の協議と金融機関の同意を得て、市場で売却し、売却代金でローンを返済する方法です。
競売と比較し、
といった特徴があります。
売却価格が残債を下回る場合、金融機関と残債処理方法について協議が必要です。
任意売却の枠組みを利用し、共有者の一方が購入することも可能です。 この場合、新規融資の可否が重要となります。
*当初収入面で単独ローンでは審査が通らずペアローンを組んでるケースでは困難な可能性が高い。
| 項目 | 債務引受(代償分割) | 競売 | 任意売却 |
| 法的安定性 | 高い | 高い | 高い |
| 経済合理性 | 物件・条件による | 市場より低額の傾向 | 市場価格に近い売却が期待 |
| 実現可能性 | 金融機関の承諾次第 | 手続要件を満たせば可 | 協議と同意が得られれば可 |
| 居住継続 | 条件により可能 | 原則困難 | 条件により調整可能 |
| 手続負担 | 中 | 高 | 中 |
行政書士が対応できる業務:
行政書士が行えない業務(弁護士の業務):
※紛争が生じている場合は弁護士への相談が必要です。
ペアローンマンションの離婚時処理は、
一般的には、
と整理されます。
早期に専門職が関与し、法的・経済的観点から選択肢を整理することが、紛争の長期化を防ぐうえで重要です。
*ここで述べる内容は、筆者の実務経験に基づく一般的な整理であり、個別の金融機関の判断を示すものではありません。 債務引受(免責的債務引受)や名義変更の可否は、金融機関ごとに審査基準・内部規定が異なるため、実際の取扱いは各行で相違があります。 また、行政書士は紛争性のある法律相談や代理交渉を行うことはできず、紛争が生じている場合には弁護士への相談が必要となります。