【2026年版】リースバックの法的整理と実務判断
– 一般売却・任意売却との比較から見る適切な選択……

以前のコラムでは、日本人夫婦の離婚に伴う住宅ローン(いわゆるペアローン)の問題について解説しました。近年はそれに加え、在日中国人夫婦の離婚に伴う日本国内の不動産や住宅ローンについての相談が増えています。
日本で生活し、日本で住宅を取得した外国人夫婦であっても、離婚手続は日本法だけで完結するとは限りません。特に中国籍の夫婦の場合は、日本と中国双方の法制度を踏まえた対応が必要となる場面が少なくありません。
今回は、実務上相談の多い「日本で婚姻した中国人夫婦が離婚し、住宅ローンの債務を一方が引き継ぐケース」について解説します。
一口に中国人夫婦といっても、その婚姻の成立方法は様々です。
例えば、
などが考えられます。
また、離婚時の財産処理についても、
など様々です。
それぞれ必要となる手続や準備すべき書類は異なるため、個別の事情に応じた検討が欠かせません。
実務上、最も多い誤解の一つがこの点です。
「日本で婚姻したのだから、日本の市区町村へ離婚届を提出すれば離婚は完了する」と考える方が少なくありません。
しかし、日本で婚姻届を提出した後、中国大使館・領事館にも婚姻の届出を行い、中国において婚姻登記がされている場合、日本で離婚届を提出しただけでは、中国側の身分関係が自動的に変更されるわけではありません。
日本で離婚届が受理されたとしても、中国側で離婚登録手続が必要となる場合があります。
その手続を行わなければ、中国側の婚姻登録情報と日本における離婚の公的記録との間に相違が生じ、このような相違は、将来、中国国内での各種行政手続や財産手続、相続などの場面で確認資料の提出を求められる際に影響することも考えられます。
そのため、日本と中国双方における手続の要否を事前に確認することが重要です。

*生成AIによるイメージ
離婚に際しては、財産分与や住宅ローン、債務の負担方法などを取り決めるため、「離婚協議書」を作成することが一般的です。
しかし、中国側でも離婚手続や届出に使用することを予定している場合には、日本国内のみで使用することを前提とした離婚協議書では足りないことがあります。
例えば、
では、それぞれ求められる記載内容や添付資料が異なる場合があります。
そのため、日本用の書類をそのまま中国側へ提出できるとは限らず、内容や形式について十分な検討が必要になります。

*生成AIによるイメージ
次に問題となるのが住宅ローンです。
離婚によって一方が住宅を取得し、住宅ローンも引き継ぐ場合であっても、当事者同士の合意だけで債務者を変更することはできません。
一般的には金融機関の承諾を得たうえで、所定の債務引受手続を行う必要があります。
審査内容は金融機関によって異なりますが、日本人同士の場合は、
などが確認されます。
さらに外国籍の方の場合には、これらに加え、
などを求められることもあります。
外国籍の方の離婚に伴う住宅ローンの債務引受は、日本人同士の案件と比較して取扱件数自体が少ないことから、金融機関ごとに必要書類や運用が異なる場合もあります。
*本件は「免責的債務引受」を前提にしています。
外国籍の方から、「永住者だから手続は日本人と全く同じでしょうか」という質問を受けることがあります。
確かに、多くの金融機関では住宅ローンの利用条件として永住許可を受けていることを挙げています。
しかし、永住者であっても国籍は外国籍のままであり、日本人とは法的な身分関係が異なります。
そのため、離婚に際して外国法上の確認が必要となる場合や、本国での登録状況の確認が必要となる場合には、日本国籍を有する方とは異なる資料の提出を求められることがあります。
必要書類や審査方法は金融機関ごとに異なるため、事前に確認することが重要です。

*生成AIによるイメージ
在日中国人夫婦の離婚では、「離婚届を提出すれば終わり」という単純な問題ではありません。
日本法、中国法、それぞれの身分関係の整理、不動産の財産分与、住宅ローンの債務引受、金融機関への対応、中国側での届出など、複数の手続が相互に関係しています。
これらを十分に整理しないまま離婚協議書を作成すると、
といった事態が生じる可能性があります。
在日外国人の離婚は、日本法だけではなく、本国法や国際的な身分関係にも配慮しながら進める必要があります。
だからこそ、離婚協議書の作成や住宅ローンの取扱いについては、国際業務及び不動産実務に精通した専門家へ早い段階で相談することをお勧めします。
本記事は、法令、公表資料および一般的な実務をもとに執筆したものであり、特定の事案に対する法的助言を目的とするものではありません。
実際の手続や必要書類は、個別の事情、関係法令の改正、各行政機関・金融機関等の運用により異なる場合があります。
離婚に伴う紛争その他の法律問題については、必要に応じて弁護士へご相談ください。
また、本記事に記載した住宅ローンに関する内容は筆者個人の見解であり、特定の金融機関の見解又は取扱いを示すものではありません。
住宅ローンの具体的な審査基準、必要書類及び手続については、各金融機関へ直接ご確認ください。